エアコンって家電の中でも大きな買い物ですよね。それに頻繁に買い換えるものでもないので、購入前には慎重に検討して失敗しないようにしたいものです。
それでも金額も機能も様々なエアコンの中で
「どう選んだらいいの?何を調べておけばいいの?」と
迷われている方もかなり多いです。この記事ではエアコンを選ぶ前段階としてよくある勘違いを解説します。
なかでも知らないと購入の前提が崩れてしまうことや工事の時にトラブルになりかねない事を4つ抜粋します。
何に気をつけて、どうするといいのかも合わせて解説しますね。
僕は家電業界22年ほど、そのうち店長を15年ほどやっています。
毎年暑くなるとエアコンのピークがきて先ほどのような相談を受けます。
そして少なくない割合の方が勘違いや思い込みでエアコンを決める直前で
「あ、それはもしかして◯◯じゃないでしょうか?」
と確認するとやっぱり勘違い・思い込みだったということが頻繁にあります。
これはエアコン購入自体がそんな頻繁にあることじゃないのと、故障で急いでいることが多いので事前準備時間がほとんどないことが原因です。
実際にあった出来事や経験からちょっとしたアドバイス的なものも含めて順に4つ解説していきます。
これを知っておくことで購入時の時間ロスや購入後のがっかりを減らせます。
参考にしてもらえたら幸いです。
① 部屋畳数とエアコン適用畳数の勘違い
和室・洋室でのエアコン効率の差
「設置する予定の部屋が10畳だからおもに10畳用っていうエアコンを選べばいいんでしょ?」
いえ、実はそれは目安でしかないんです。
この勘違いは和室と洋室ではエアコン効率が全然違うこと、木造と鉄筋でもエアコン効率が違うことが原因です。
エアコンの畳数については「おもに6畳」「おもに8畳」というような記載になっています。
表示に広さの幅があるのは設置する部屋の構造や向きなどの条件が家ごとに違うからです。
そうなると冷暖房効果が異なるわけで、例えば和室などで空気が逃げていきやすい部屋なら表の小さい方の畳数を見た方がいいです。
上の例は「おもに10畳用」と言われるようなエアコンの一例です。
このエアコンを選んだとして、実際の設置場所が南向き和室だった場合には冷房も暖房も実は8畳くらいのパワーしかないですよってことです。
だからこの場合はパワー不足です。ワンランク上の「おもに12畳用」サイズを選んだ方がいいですね。
それと3階建て以上の建物だと最上階の壁・天井には熱がたまります。なのでマンション最上階の場合も実際の畳数プラス2畳くらいのエアコンを選ぶといいですよ。
吹き抜け・天井がエアコンより高い
実はエアコンは内機より上に気流制御できないのが普通です。
なので吹き抜け天井になっている部屋とか上の絵のように天井がエアコンより高い場合はうまく部屋の温度をコントロールできない場合が多いです。
この場合も部屋の畳数よりプラス2畳くらいのパワーのエアコンを選ぶと良いでしょう。
それとサーキュレーターなどで部屋の空気を循環させるように工夫するとなお良いと思います。
サーキュレータの置き場所については部屋の間取りにもよりますが、部屋の空気を円を描くようにするのがいいとされています。下の図は置き方の例です。
キッチンのある部屋・大きな窓のある部屋
キッチンのある部屋とか大きな窓のある部屋も畳数に余裕を持って選択するといいです。つまりリビングですね。
キッチンには当然換気扇が付いています。調理中は部屋の空気をガンガン外に逃しているわけで、そのぶんの空気が別の箇所から入ってきています。
さらにIHではなくガス調理の場合は熱が周囲に逃げますから部屋の温度も上がります。
リビングは大きな窓が付いていることが多いのでそこからの熱エネルギー移動も考慮して実際の畳数プラス2畳くらいの選択をするといいですよ。
もちろん予算との相談になりますが。
窓については断熱素材のカーテンなども使用するとエアコン効率が上がります。
畳数についての勘違い対処まとめ
ここまでの畳数についての勘違いの対処まとめです
- 和室と洋室、木造と鉄筋ではエアコン適用畳数が違う
- マンション最上階などは畳数に余裕を持つ
- 吹き抜けや天井が高い部屋は畳数に余裕を持つ
- キッチンや大きな窓のある部屋は畳数に余裕を持つ
これらに注意して適用畳数を選んだ方が後悔しないですね。
ちなみに畳数に余裕を持って選んだら電気代が無駄にならないか?と思われることもあるのですが、エアコンの電気代が大きいのは設定温度に達するまでです。
そのあとはそれほど電気代がかからないようになるので、むしろフルパワーで稼働している時間が長い(パワー不足)の状態の方が電気代がかかります。
② 室内機の取り付けに関する勘違い
エアコン専用電源がなかった
この勘違いは少なくないです。実際に現場チームからの緊急連絡で
「取り付け予定の部屋に専用電源がありません・・・!」という事態が発生します。
エアコンの室内機を取り付ける近くにはエアコン専用の電源が必要です。
このような感じでエアコン室内機のすぐそばに電源があるはずです。
くどいようですが「エアコン専用の電源」が必要なので、通常の家庭用コンセントを延長してエアコンにつなげるのはできません。
実際にエアコン設置予定の部屋に工事に行くと電源がなくて工事できなかったという事態も発生します。
もし、新築とか引越しなどで部屋ごとのエアコン専用電源のことがよくわからない時は図面があれば店員さんに見せればわかるはずです。
もし取り付けたい部屋に入ることができるのならエアコン取り付け予定の場所の写真をとって店員さんに見せるのもいいですね。
それと部屋の形が長方形ならできるだけ長手方面に向けてエアコンを取り付けると空気が循環しやすいので効率が良くなりますよ。電源の位置とかダクトの位置に制約されますので、これはできる範囲で。
エアコン専用電源の種類が違った
この勘違いは入れ替えではなく新規取り付けや引越しなどの時にたまに発生します。
実はエアコンはコンセント形状が4種類あります。
右に行くにつれパワーのあるエアコンに対応します。
はっきり言って、このエアコンコンセント形状のことをわかっててエアコンを選んでいる方はかなり少数派です。そもそもエアコン専用電源が天井近くにあって、しかも既存エアコンがある場合はコンセントが差し込んであるわけですから見えないんですよ。仕方ないと思います。
なので、既存エアコンの買い替えなら現在設置してあるエアコンの型番を写真に撮って店員さんに見せるといいです。それがどういうコンセント形状のエアコンかは型番があれば調べることができます。
既存エアコンが設置してない場合はやっぱりコンセント部分を写真に撮って見せるといいです。
ちなみに検討中のエアコンがどのコンセント形状を採用しているかというと
こういうスペック詳細があるので「施工情報」の欄に記載があります。
この場合は200V(ボルト)で20A(アンペア)の電源ですよ、ということです。
4種類あるコンセント形状のうち最もパワフルな出力のコンセントですね。
まんなかの人の顔のような、なんだかムッとしたように見える図はコンセント形状をわかりやすくしたものです。
このあたりの確認はリアル店舗でエアコンを購入する際は店員さんに確認してもらうといいです。
気をつけないといけないのは通販やWEBで購入する場合ですね。
届いてからコンセント形状が違ったらもちろん工事ができないです。
天井からカーテンレールの間に設置できなかった
この設置トラブルは割と発生します。というのもエアコン室内機は運転する時フラップが下向きに稼働するからなんですね。室内機の高さが30センチだとして設置高さ幅は最低45センチ必要だった、ということは普通にあります。
エアコン買い替えの時にも発生しがちなのですが、おそらく
「今もエアコンが設置してあるし同じ畳数用のエアコンならどれでも設置できるだろう」
という思い込みが結構あるのではないかなと思います。
実は同じ畳数でもシリーズによって室内機の寸法は随分違います。
また、カタログの室内機寸法とは別に設置必要寸法も違います。
パナソニック公式ホームページより引用 EXシリーズ寸法
EXシリーズ室内機必要寸法
パナソニックEXシリーズの場合、室内機の高さは295㎜となっていますが、必要寸法は最低でも446㎜ですね。
三菱Rシリーズの場合、室内機の高さは255㎜となっていますが、必要寸法は最低でも295㎜ですね。
エアコンによって必要な高さ幅が違うということがわかります。
設置トラブル防止のためにメジャーで天井からカーテンレールまでの幅を測っておくといいです。
もしかなり狭い場合は、各メーカで「スリムタイプ」というシリーズをラインナップしていることが多いのでそういうモデルを探すといいですよ。
2022年7月時点での各メーカが発表しているスリムタイムの例を紹介しておきます。
- パナソニックGXシリーズ
- 三菱Rシリーズ
- 日立Wシリーズ
- 東芝DT・P・Mシリーズ
- シャープPHシリーズ
- ダイキンCシリーズ
これらは室内機の設置高さ幅30センチ前後で設置できるようなスリムタイプの例です。
室内機設置についての勘違い対処まとめ
ここまでの室内機についての勘違い対処まとめです。
- エアコン専用電源が必要(家庭用コンセントではない)
- コンセント形状は4種類。部屋がどの形状かは写真を撮るといい
- 室内機設置に必要な最低寸法を確認して選ぶ。特にカーテンレール上は注意
- 今エアコンが設置してある場所に買替えのエアコンが設置できるとは限らない
- 各メーカでスリムタイプのエアコンが開発されている
③ 室外機の設置場所の勘違い
「室外機は外側に置いておくだけでしょ?」
確かにエアコンが動かないなんてことはないですが、室外機の場所はよく検討した方がいいですよ。
どこにどうやって置くかでエアコン効率も変わってきますしご近所トラブルになりかねないこともあったりします。
吹き出し先の植物が枯れた・狭くて排気されない
冷房運転しているときはこの絵のように室外機から外気より暑い空気が出ます。
この排気が植木とかプランターの植物などに直接当たるような配置だと枯れてしまったりします。
特に注意が必要なのは隣家との境目が狭い場合に排気が相手側の窓に当たる場合などは要注意ですね。
他にも戸建住宅を建てる時に室外機の場所を考慮してなくて、後からエアコンを取り付けたら目の前にブロック塀があるといったケースもありました。
これだと十分に空気が排出されずにエアコンの効きが悪くなったりします。
冷房効率を上げようと思ったら室外機に直射日光が当たらないようにするといいですよ。
日陰になるようにできるといいのですが、難しいなら市販の室外機用日よけというものが数千円で販売されています。
目安としてこのくらいはスペースを確保した方がいいです。
冬のことを想定してなくて雪に埋もれた
暖房運転しているときは反対に室外機から冷たい空気が出ます。
そんな時に室外機が雪に埋もれてしまうと冷気が逃げられなくて暖房が効かなくなります。
「なんだか暖房が効かないから修理にきて欲しい」と問い合わせがあって修理を手配すると
室外機が雪に埋もれてしまっていたというケースも結構発生します。
これは冬場に積雪のある地域の場合ですが、夏場は問題なかったのに冬になってベランダや屋根下などに置いた室外機が雪に埋もれたということは多いです。
そうなると暖房能力が激減します。場所の選択肢がない場合は平置きより架台を使って埋もれないようにするといいです。
上の図のようなかさ上げ架台は大体1万5千円ほどの追加工事になることが多いです。
余談ですが、夏の時期に「室外機を冷やそうと思って水をかけたら壊れた」とか冬の時期に「室外機の氷を溶かそうと思ってお湯をかけたら壊れた」という修理依頼がシーズンごとに何件かきます。
室外機には水もお湯もかけたらダメですよ。
室外機設置についての勘違い対処まとめ
ここまでの室外機設置についての勘違い対処まとめです。
- どこでもいいわけではなく、風の吹き出し先に注意
- 室外機の前だけでなく上や横もスペースを空ける
- 冷房効率を上げるなら室外機に直射日光が当たらないようにする
- 暖房効率を上げるなら室外機が雪に埋もれないようにかさ上げ・雪囲いをする
室外機は設置した後にあまり移動するものではないので事前に確認しましょう。
特に夏場がエアコン購入のピークなので冬の積雪のことが想定されてないことが多いです。
雪が積もってから「しまった・・・」とならないように気をつけましょう。
④ エアコン工事料金についての勘違い
リアル店舗でもWEBサイトでも「標準工事込み」でエアコン販売していることが多いですよね。
この標準工事の内容がどこまでの工事なのか?何から追加料金が必要なのか?を
事前に確認しないと考えていた以上に工事料金がかかったという事態になります。
順番に「標準工事」と「追加工事」の例を解説します。
標準工事の例
こちらはヨドバシカメラの標準工事です。基本的な工事内容だと思います。
ただ、「既に壁に穴が空いている状態」という部分があって、穴あけ工事が必要な場合は追加が必要です。
エアコンのキロ数は2.2kWから3.9kWなら10,780円、それ以上なら15,950円の2パターンですね。
既存エアコンがあって、既に穴が空いてるなら穴あけは必要ありません。
https://www.yodobashi.com/ec/support/beginner/setup/aircon/
ジョーシンだと工事内容は似ていますが穴あけ1箇所が作業内容に入ってますね。
それとエアコンのキロ数によって4パターンの標準料金になっています。
最小1万円から最大2万4千円となっています。
ジョーシンのエアコン工事料金ページはこちらです
https://joshinweb.jp/season/construct.html
ヤマダデンキも工事内容はジョーシンとほぼ同じ。穴あけ1箇所が入ってますね。
https://www.yamada-denkiweb.com/info/wcontents/kouji_aircon.html
有名どころ家電量販店の3社の標準工事内容を比べてみると、内容としてはほとんど同じです。
逆に言えばこの作業以外が発生するなら追加料金がかかると思っておいた方がいいでしょう。
いくつか標準工事の例を挙げました。量販店ではエアコン標準工事内容としてはほぼ同じです。
ここまでの標準工事をまとめると
- 室内機の取り付け(専用電源あり)
- 室外機の設置(同階の平置き)
- 4メートル以内の配管
- 配管はテープ巻き
- 穴あけ1箇所(材質による。ヨドバシカメラは別料金)
「標準工事込み」というのはこれらの内容が価格に含まれてますよ、ということです。
ヨドバシカメラの場合穴あけが標準に含まれていないことは注意ですね。
リアル店舗の価格だと標準工事込みとなっているのが通常です。
それでも例外的に標準工事別になっていることがあるので念のため確認した方がいいでしょう。
気をつけないといけないのはWEBサイトでの販売の時に安いなと思ったら「配送のみ」となっている場合です。
そうなると標準工事料金が加算されるわけです。先ほどの例でもあったようにエアコンのキロ数によって1万円から2万4千円ほど必要です。これが量販店でもバラバラだったように、統一された料金ではありません。
各WEBサイトでも説明されていますので注意してみた方がいいです。単純に1万円くらい足して考えておけばいいか、という訳ではないんですね。
追加工事料金の例
標準工事の目安が分かったので、追加料金がいくらくらいなのか?の例もいくつか紹介します。
今あるエアコンを取り外してリサイクルに出すのはどの量販店でも
撤去が約5千円+リサイクル料金約2千円で合計7千円くらいです。
ヨドバシさんは穴あけが別料金でしたけど撤去費用は他よりちょっと安いですね。
次はジョーシンのエアコン工事別料金の一例です。
ジョーシン公式ホームページより引用 設置場所別料金例
若干料金に違いがありますね。これらの料金はほんの一例です。
次はヤマダデンキの追加工事料金例です。
ここまで3社の追加工事料金例を並べましたが、これは目安とだけ思っていた方がいいです。
エアコン工事を普段からしていない方が
「うちの場合これとこれの工事が必要だから◯◯円くらいかかるなぁ」
と計算するのははっきり言って無理です。僕も言葉で聞いただけの情報からいくらかかりますね、なんて軽々しく言えないです。
それでもいくらぐらいかかるのか目安がないと準備ができないと思いますので、解決策としては
購入前に事前工事見積もりを入れましょう!
これはもう絶対にお勧めします。大抵の量販店ではエアコン事前見積もりは無料でしてくれます。
購入する側としても事前に料金目安が知りたいと思いますし、販売側としても当日現場で料金トラブルが防止できます。想像以上に現場に行かないと判明しないことってあるんです。
実際にあったトラブル例
- 再利用できると聞いていた架台が錆びていて使えない
- 取り付け予定の壁の強度が弱くて場所が大きく変更
- 室内機の高さがカーテンレールに干渉して取り付けできない
- エアコン電源ではなく家庭用電源だった
- 隣家との間が狭くてハシゴが立てられない
- 畳数を見誤っていて購入したエアコンが明らかに畳数不足だった
- 隠蔽配管だったのでエアコン選びなおし
これらはほんの一例ですが、事前工事見積もりを入れることでほとんど回避できます!
せっかく購入したのにがっかりすることが無いようにしたいですね。
もし、事前工事見積もりをして思ったより工事料金が高額ならエアコンのグレードを調整したり購入を見合わせるなど判断ができますからね。当日になって発覚という事態は避けたいです。
時間に余裕があるなら複数の会社で見積もりを取って比較するのもいいと思います。
余談ですが、ご家族で住んでいるお家にエアコンを取り付けるときに購入した方と当日立ち会った方がどの部屋のことを言っているかすれ違いになっていることもありました。笑い話のような感じで連絡が来ましたが、購入者の方が帰宅したらエアコンが効いてるだろうなぁと思ったらおばあちゃんの部屋が新品のエアコンになっていたという事でした。
購入する方と当日立ち会う方の情報共有もした方がいいですね。
選び方基礎編まとめ
最後まで読んでいただいてありがとうございます!
今回の記事はエアコン購入の前段階で知っておいてほしい基礎編でした。
畳数の考え方、室内機や室外機の場所によっては機種検討の前提が崩れちゃいますからね。
工事料金については事前工事見積もりがお勧めです。6畳や8畳エアコンの場合だと本体価格と工事価格が同じくらいかかる、なんてことも普通にあります。当日発覚という事態は避けたいです。
次回はエアコンの機種を選ぶ際のよくある勘違い編を作成します。
「高級ゾーンのエアコンは贅沢だと思ったら実は電気代コスト差で数年で逆転した」
「内部クリーンというのが付いてたら掃除しなくていいと思ってた」
等について
エアコンをどれにするか選ぶ段階で発生する思い込みや勘違いを解説していきます。
失敗しない為のエアコンの選び方機種選び編【よくある勘違い5選】を現役店長が解説これからどのエアコンにするか選択していく予定の方はぜひ読んでください。